2026年からの開業規制とは?開業検討用チェックリストを交えて解説
2024年12月、厚生労働省が「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定し、2026年4月から段階的に新たな開業規制が施行されます。医師が過剰に集中する「外来医師過多区域」での新規開業には、地域で不足する医療機能の提供が要請され、応じない場合には一定のペナルティが科されます。開業を検討している医師にとって、開業時期や場所の選択に大きな影響を与える政策転換の節目となるでしょう。本記事では、開業規制の全体像から具体的な対象地域や対応策、さらには規制に応じない場合の留意点まで、開業を目指す医師が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
開業規制の全体像
2024年12月25日、厚生労働省は「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定しました。
パッケージの中核となるのが「外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等」です。都道府県が外来医師過多区域の新規開業希望者に対し、開業6か月前に提供予定の医療機能等の届出を求め、協議の場への参加、地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供を要請できるようになります。
出典:厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ(概要)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001363487.pdf)
医師偏在是正対策の経緯について詳しく解説したセミナーも用意しているため、より深く理解されたい方は活用ください。
セミナー視聴はこちらから:医師偏在是正対策の論点と展望~開業に及ぼす影響は?~
2026年4月からの変更点
2026年4月から「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が施行されます。施行により、まず「重点医師偏在対策支援区域」において各種支援が実施されます。
具体的な支援内容の例は、以下のとおりです。
- 承継・開業する診療所の施設整備費支援
- 医療機器購入費の支援
- 診療所運営に必要な経費の支援 など
支援対象の「重点医師偏在対策支援区域」とは、各都道府県で医師偏在指標がもっと低い2次医療圏など、約100区域が候補として厚生労働省から提示された区域のことです。
出典:厚生労働省「①重点医師偏在対策支援区域について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001634535.pdf)
また2026度診療報酬改定では、外来医師過多区域での開業時要請に従わない場合、診療報酬上の減算措置が講じられることも明記されました。
出典:厚生労働省「診療報酬改定についてP4」(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf)
2026年4月からは「どこで開業するか」が、これまで以上に重要になったといえます。開業を検討する際には、外来医師過多区域に該当するかどうか、該当する場合はネガティブな部分を考慮しても開業するメリットがあるかをチェックしましょう。
開業が規制される理由・背景
開業規制が導入される背景には、日本全体で深刻化する医師の地域偏在問題があります。都市部に医師が過度に集中する一方で、地方では医師不足が深刻化しており、地域住民が必要な医療サービスを受けられない事態が生じています。
厚生労働省の医師偏在指標によると、もっとも医師数が多い東京都(353.9)ともっとも少ない岩手県(182.5)では、約1.9倍もの格差が生じている状況です。
出典:厚生労働省「医師偏在是正対策についてP74都道府県別の医師偏在指標(令和6年1月公表版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001335627.pdf)
偏在により、地方では救急医療体制の維持が困難になったり在宅医療や訪問診療の提供体制が脆弱になったりするなど、地域医療の崩壊が現実的な課題として挙げられています。
状況を打開するため、都市部での新規開業に一定の制限を設けて医師の地域偏在を是正し、全国で均質な医療提供体制の構築を要する状況と整理できるでしょう。
開業規制に該当する地域
2026年1月19日の社会保障審議会医療部会で、9か所の二次医療圏が「外来医師過多区域」の候補としてリストアップされました。
出典:厚生労働省「医師偏在対策について P30」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001634535.pdf)
2026年4月以降、各都道府県知事が上記医療圏のすべて、あるいは一部地域を外来医師過多区域に指定し、外来医療計画として順次公表すると想定されます。また、対象区域で2026年10月以降に新規開業する医師に対し、地域で不足する医療機能の提供を要請する形が現在の整理です。
開業が規制される地域で開業を予定していた場合の対応策
ここからは、外来医師過多区域で開業を予定していた場合の対応策を解説します。都道府県から要請される機能提供と構想が合致すれば、外来医師過多区域でも開業が可能です。現在検討している内容とのギャップ把握の参考になさってください。
地方での開業を検討する
医師過多区域を避け地方での開業を検討するのは、状況を好転させる1つの選択肢といえるでしょう。なぜなら、医師偏在是正プランの一環として、地方を含む「重点医師偏在対策支援区域」では資金支援制度の拡充や診療報酬の加算措置などのメリットが受けられるためです。
地方開業は都市部と比較して競合が少なく、地域から必要とされる存在として医療を提供できるやりがいもあります。また、開業コストの面でも都市部に比べて土地代や賃料がおさえられる可能性が高く、経済的な側面からも検討する価値があります。
開業のタイミングを再考する
医師確保計画は3年ごとに都道府県で見直しがされるため、開業のタイミングを再考する選択肢もあります。現在、外来医師過多区域に指定される見込みの地域であっても、3年後の見直しでは状況が変わる可能性は否定できません。
ただし、医師の地域偏在は構造的な問題であり、短期間で劇的に改善するとは考えにくいため、長期的な視点で開業計画を立て直す必要があります。
行政協議に向けて準備を進める
各条件を踏まえて外来医師過多区域で開業を進める場合、行政協議に向けた事前準備が必要です。厚生労働省がまとめている手続きの流れは、以下のとおりです。
出典:厚生労働省「医師偏在対策について P37」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001634535.pdf)
なお、開業の手続きは、保健所や厚生局とのやり取りも並行して進めなければなりません。開業日に向けた準備のポイントや注意点をスケジュールに沿って解説した資料も用意しているため、参考になさってください。
お役立ち資料のダウンロードはこちらから(無料):クリニック開業の3大プロセスと成功へ導く7つのポイント
開業検討中の医師が知っておくべき「もう1つの事実」
開業規制に関する議論では「規制」の言葉が独り歩きしがちですが、実際には完全な開業禁止ではありません。地域医療への貢献を条件とした「要請」であると理解しておく必要があります。
なぜなら、外来医師過多区域であっても地域で不足する医療機能を提供する意思があれば、開業は可能なためです。
今回の規制は、職業選択の自由との兼ね合いから慎重な議論を経て設計されており、医師の自由な開業の権利を完全に制限するものではありません。むしろ、地域医療のバランスを取るための「誘導策」として位置づけられているといえます。
開業規制区域で要請に応じない場合の留意点
外来医師過多区域で地域医療機能の提供要請に応じない場合、経営面で大きな影響を及ぼす可能性があります。要請に応じない場合の措置について、以下で詳しく解説します。
医療機関名が公表される
地域で不足している医療機能の提供要請に応じない場合、まず都道府県医療審議会で理由等の説明を求められます。やむを得ない理由がないと判断された場合、都道府県から勧告を受け、最終的に医療機関名が公表されます。
医療機関名の公表は、地域住民や医療関係者に広く周知されるため、医療機関の評判や信頼性に影響を及ぼしかねません。とくに開業初期においては、地域での認知度や信頼を構築する時期であり、ネガティブな情報の公表は患者さんの獲得に不利に働くでしょう。
保険医療機関の指定期間が6年から3年に短縮される
開業前に要請を受けた診療所が、要請後に保険医療機関の指定を受けた場合、保険医療機関の指定期間が通常の6年ではなく3年または2年に短縮されます。
出典:厚生労働省「医師偏在対策について P41」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001634535.pdf)
指定期間の短縮により更新手続きの頻度が増え、事務負担が増加します。保険医療機関の指定は、保険診療を行ううえで必須の要件です。指定が取り消されると保険診療ができなくなるため、経営に致命的な影響を及ぼします。指定期間の短縮は、実質的に地域医療への貢献を継続的に求める強い動機付けといえるでしょう。
補助金・助成金が制限される可能性がある
要請・勧告を受けた医療機関に対しては、補助金や助成金の不交付等の措置が取られる可能性があります。医療機関が利用できる補助金や助成金には、施設整備に関するものやIT導入に関するものなど、種類はさまざまです。
補助金は、医療機関の経営を下支えする資金源となるケースが多く、開業初期には設備投資や運転資金の確保に大きく貢献します。補助金の不交付は、経営計画に直接的な影響を及ぼす可能性があるため、開業計画を立てる際には、地域医療への貢献を前提とした資金計画を立てましょう。
開業判断のための情報整理チェックリスト
開業規制の全体像を理解したうえで、実際に開業に踏み出すべきかどうかは、必要な情報が揃っているかを確認することが大切です。以下のチェックリストを、ご自身の情報整理状況確認用としてお役立てください。
チェックリストを踏まえた次のアクションの参考として、開業規制下での戦略の立て方をまとめたお役立ち資料を用意しています。
開業医の経験から得られた具体的なステップを詳しく解説しているため、ダウンロードしてご活用ください。
資料のダウンロードはこちらから:これからのクリニック開業戦略 ~開業医から学ぶ5つの対策~
また、ご自身の状況を相談しながら次の一歩を検討したい場合は、開業相談サービスをご活用ください。開業規制の影響を踏まえた個別具体的なアドバイスを提供しています。
開業に関するご相談はこちらから:新規開業・事業承継・M&A等に関するお問い合わせ
まとめ
2026年4月から施行される開業規制は、医師の地域偏在を是正し、全国で均質な医療提供体制を構築するための政策転換点といえます。外来医師過多区域での新規開業には地域医療への貢献が求められますが、完全な開業禁止ではなく、地域で不足する医療機能を提供する意思があれば開業は可能です。
開業を検討している医師は、開業を予定している地域が外来医師過多区域に該当するかを確認し、該当する場合は地域医療への貢献を前提とした開業計画が必要です。開業規制は今後の医療政策の方向性を示すものであり、3年後の見直しではさらに規制が強化する可能性は 十分考えられます。
開業を成功に向けて進めるためには、政策の動向を見極めながら戦略的に開業計画を組み立てていかなければなりません。
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